太陽と毒ぐも

2005年8月13日 読書
ISBN:4838714998 単行本 角田 光代 マガジンハウス 2004/05/20 ¥1,470

こういうことってあるよね!!っていう話が、これでもかっていうほどつまった短編集。恋人の欠点をどこまで許せるのかっていうストーリー展開。欠点は、「おふろにはいらないずぼらな女」、「必要でもなんでもないものを買わずにはいられない買い物依存症男」、「喋らなくていいことを他人にぺらぺら話す女」、「万引き癖がなおらない女」などなど、色んなバージョンが用意されていて、自分は相手のことを許せない、と思っているけれど、実は相手も自分について納得のいかない部分があって、相手が自分の欠点を大したことじゃないって思っているのと同様に自分も自分の欠点に気づかない。そんなちぐはぐさが完全にはならない恋人たちの気持ちを巧みに描いている。角田さんは本当に人間観察をしているよね。感心しちゃいます。面白かった〜
ISBN:4592750101 単行本 江國 香織 白泉社 2005/06 ¥1,260

この本を最後にしばらく江國作品を読むのをやめようと思う。やっぱり私にはあんまり面白さがわからない。たとえば本を買うときに「最高傑作」とか「完全版」なんて売り込み帯がついているとついつい手にとってしまうけれど、「最高傑作」とかいいながら「最高傑作」はひとつじゃない。だからって、表示法違反だ、なんて言えない。読み手にとってはどれが最高かなんてわからないし、好きな作者も人それぞれだから。それと同じことだ。多くの本に共感し、どの本を読んでも感動をもらえたら素敵だなと思うんだけど、嗜好があるからこそ文学という世界が成り立っているんだとも思う。

間宮兄弟

2005年8月8日 読書
ISBN:4093874999 単行本 江國 香織 小学館 2004/09/29 ¥1,365
さえない兄弟のさえない日々が描かれている。一見ひややかに見られがちな兄弟の仲むつまじさは、入り込んでみるとどことなく羨ましくも見えてくる。性格は「足して割れば丁度よい」の典型で、比較してみるとやっぱり弟の方に好感をもってしまって、大らかな人間の方がいいかなぁと思う。自分がその方が幸せだろうしね。
ISBN:4043750021 文庫 おーなり 由子 角川書店 2005/07/23 ¥780

「HB」の話が最高に気に入った。根拠のない自信っていい。
「ぼくは自分にじしんをもってる やわらかすぎず かたすぎず バランスがとれてるってことさ 六角形ってのもいい ホントほれぼれする 美しい!! ころがるときなんて うたがでるよ シャーペン?問題外だね 価値観がちがうよ 話にならない 芯が丸くなっていくところが シブイんだ 丸いときの僕をみてくれ 頼れるって感じだろ?芯がまるいとうれしくってにやけちゃうさ・・・・・」

私もこんな風になりたい。こんな風に自分を好きになってあげたい。誰かと比べたりなんかしないで、自分のよさを認めてあげたい。

蛙男

2005年8月3日 読書
ISBN:4877282939 単行本 清水 義範 幻冬舎 1999/04 ¥1,680

自分の体がある時を境に蛙になってしまう。その姿は自分以外には見えない。日に日に蛙でいる時間が長くなっているように感じ、不安になっていく主人公。その一方で、泳ぎたいという蛙ならではの欲望にかられ、入会したスイミングスクールで出会った久美子。自然にふたりはつきあうようになる。彼女といると主人公は不思議と落ち着くのだった。ある日、久美子の目にも自分が蛙に見えていたことを知り、ショックを受けるが、久美子には、他の人間も人間以外の生き物のようにみえることがあるのだと聞き、驚くと同時に安堵する。自分だけがおかしいわけではなかったのだ。しかし突然久美子は姿を消した。久美子の異常が誰の目にもわかるところまできてしまったのだ。久美子は大きな蚕だった。その事実を知った主人公は驚愕し、いずれ自分もそうなる日をむかえることを思い、呆然とする。

一風変わった面白いストーリーだった。そういうこともあるのかもしれない。それは小説として受け入れると喜劇だが、現実として考えると恐ろしい事態だろう。内容の不気味さのわりに小気味のいい文章によってテンポよくストーリーが展開していく。たまにはこういう話もいいな。
ISBN:4061879367 単行本 村上 春樹 講談社 1991/03 ¥3,360

ノルウェイの森はあまりにも有名なのでいまさらという気がして、読みたいけど最近まで手付かずだった。でも、すごくよかった。作者本人はこの本のことを恋愛小説というよりは成長小説だと言っていた。詳しい概念はわからないけど納得。作品からの衝撃が大きかったのか、なかなか寝付けずに睡眠不足。
とりわけ好きだったのは、主人公の言い回し。緑とのやりとりの中でも、「きみのこと春の熊くらい好きだよ」っていう箇所がすごくときめいた。こんなこと実際に言ってくれる人はいないだろうし、こんなにも知識、想像力を兼ね備えた人を目の当たりにしたら、それはそれでこわいかもしれない。でも小説の中ではすごく素敵だと思った。真剣な顔をして冗談を言ったり、いつでも正直であろうとするところもツボだ。それにしても、人間、あんまり潔癖でいようとするとしんどいし、流れに身を任せたらうまくいくことって多いんだけど、わかっていても難しい。そしてそれがうまくできるのは「おとな」とよばれる人に多い気がする。
ISBN:4334924352 単行本 江國 香織 光文社 2004/06/19 ¥1,890

ドメスティックバイオレンスの本を以前に読んだことがあったから、麻子のはなしが一番ひきつけられた。
江国ファンが多いのはなぜだろう。それなりに面白いけどいつもそこまでひきつけられないのはなぜだろう。

一瞬の光

2005年7月30日 読書
ISBN:4043720017 文庫 白石 一文 角川書店 2003/08 ¥780 橋田浩介は一流企業に勤めるエリートサラリーマン。38歳という異例の若さで人事課長に抜擢され、社長派の中核として忙しい毎日を送っていた。そんなある日、彼はトラウマを抱えた短大生の香折と出会い、その陰うつな過去と傷ついた魂に心を動かされ、彼女から目が離せなくなる。派閥間の争いや陰謀、信じていた人の裏切りですべてを失う中…

「僕のなかの壊れていない部分」とよく似た設定だったから、その分少し物足りないような、完成されていないような気もしたけど、それなりに面白かった。現実にはできないだろうな、と思うことを小説ではやってのけるところが夢を与えるよな、と思う。人を好きになる気持ち、大事に思う気持ちは、理屈じゃない。
少し話がそれるけど、最近うちの中は殺伐としていて、料理しようにも買ってこないと冷蔵庫にはまったく食材がないというせつない状況を笑いながら話したところ、思いのほか強く抱きしめられた。みじめな話も聞く人によってはこんな風になるのかぁ・・・笑い話のつもりだったんだけど。うーん。

センセイの鞄

2005年7月21日 読書
ISBN:4167631032 文庫 川上 弘美 文藝春秋 2004/09/03 ¥560

なかなか味のある作品だと思う。じわじわとくるかんじ。人が恋に落ちる時って、結構自分でもわからないもの。登場人物を淡々と描写することによって、それがわかりやすく伝わってくる。主人公一人だと、ちっともかわいらしく描写されていないのに、センセイといるときは、かわいらしく思えてくるのが不思議だ。これが恋をするということなのか。センセイは国語の教師らしく主語と述語が明確なところが笑える。今の時代、こんな先生、いるかなぁ。
ISBN:4101058210 文庫 角田 光代 新潮社 2003/06 ¥420

自分の父親に「ユウカイ」される幼い主人公。父親は母親と取り引きを成立するために今回の「ユウカイ」に至った。父親は主人公が住む家にしばらく帰ってきていなかった。
お金のない父親との安宿暮らしやテント暮らしに慣れていくうちに、主人公は家に帰りたくなくなる。はじめは帰れるっていうのが当たり前のことだと思っていたのに。取り引きが成立した時、主人公はがっかりする。しかし、想像する。数時間後にはユウカイされる前の生活に戻っている自分を。

ロックンロール

2005年7月12日 読書
ISBN:4838714580 単行本 大崎 善生 マガジンハウス 2003/11 ¥1,575
ISBN:4334738397 文庫 白石 一文 光文社 2005/03/10 ¥650

「虹」

2005年7月12日 読書
ISBN:4344001796 単行本 吉本 ばなな 幻冬舎 2002/04 ¥1,470

夜の果てまで

2005年7月4日 読書
ISBN:4043743017 文庫 盛田 隆二 角川書店 2004/02 ¥780
恋人に振られたばかりの主人公。その主人公の心の隙間を埋めるかのように現れた正太の存在。いつしか正太ではなく正太の母親が主人公にとってかけがえのないものになっていく。はじめは本気でかけおちするきなどなかった主人公だが、ずるずると決断を先延ばしにしていたために、後戻りできないところまできてしまう。

何を転落というのかはわからないけれど、人生なんてこんなものだと思う。瞬間瞬間が分岐点であるけれど、どれが正しいことなのかはわからない。自分の良心はあてにならない。社会的にみてどうか、という観点から離れて過ごしてみると、正しいことなどすぐに見失うに違いない。自分にとって本当に大切なものはなにか、ということがわかっていて、それを守ることにこそ意味があり、ほかの事はどれも重要ではないのかもしれない。
ISBN:4309011683 単行本 角田 光代 河出書房新社 1997/09 ¥1,365

車を買ったことが嬉しくて、ただ見せに行っただけなのに、いつの間にか今まで主人公が体験したことのないような旅になる。夢中で読んでいたらあっというまに読み終えた。久しぶりにすごく面白かった。私も主人公の車に乗って旅したような気分。
読み終えるとすがすがしい気持ちになった。

みどりの月

2005年6月16日 読書
ISBN:4087475832 文庫 角田 光代 集英社 2003/05 ¥540

読んでいるといらいらしてくるぐらい、主人公の思いが伝わってくる。でも最後に主人公が解き放たれる様子が意外だった。

何の解決もしていないのに、自分が非難していた恋人と結局は同じ道を選ぶのか。

角田さんの作品は途中まですごくわくわくするせいか期待しすぎちゃうみたい。

でも気持ちの描写が本当にうまいな。きっといろんなことを感じながら生きているんだろうな。
ISBN:4860520122 単行本 奈良 美智  吉本ばなな ロッキングオン 2002/12 ¥2,625

やっぱり吉本ばななの本はやっぱり読みやすいなぁ。読みなれてるからかなぁ。

ストーリーの展開にびっくりしたけど、本人が幸せを感じられるならそれでいいよね。

愛しているアルゼンチンババアがどんなに汚らしくても、結婚してすぐ死んでしまっても、自分がアルゼンチンジジイとよばれても、主人公の父は幸せだったんだろう。

それでいいじゃないか。
それ以上何も必要ないじゃないか。
でもこんなことやっぱり現実には・・・ないだろうなぁ。

トリップ

2005年6月13日 読書
ISBN:4334924255 単行本 角田 光代 光文社 2004/02/20 ¥1,680

主人公が転々と入れ替わる。同じ場面でも受け取る側によって全然違う印象を受ける。毎日の生活とは本当にこの小説のようなものかもしれない。私みたいにうんと被害妄想が強いと、無意味な傷をたくさん負う羽目になるんだろう。

もう少しストーリーが数珠繋ぎのようだったら、もっと楽しめた気がする。でも、ばらばらだからこそ意味があるのかもしれない。普通は他人の人生と自分の人生は結びつかないものなんだ。共有している部分があれば、珍しい。人と人の出会いって本当に貴重なんだ。
ISBN:4061845764 文庫 佐々木 マキ 講談社 1989/11 ¥490

春樹ワールド満載。村上春樹はどうして作品の中で羊を用いるのかはわからないけれど、私はなぜか羊が大好きなので大歓迎。
羊って弱弱しいかんじがするけど、こんなにファンタジー性のある動物も他にはないと私は思っている。
シナモンドーナツ食べたくなっちゃった。
子供の頃読んだ絵本って、「○○はとっても怒っていましたが、なぜだかだんだん楽しくなってきました」てフレーズが多い。昔は気に留めていなかったこのフレーズが今は妙に違和感を覚える。子供の頃の柔軟な思考から、複雑・頑固な思考に変わりつつあるのですね。
たまにはこんな風に絵本を読んで頭をやわらかくしたいものです。
ISBN:4167502038 文庫 村上 春樹 文芸春秋 1999/10 ¥450

久しぶりの短編。こうやって何も考えずに読めるものが好き。あれこれ考えたりせずにするりとストーリーに入っていける。

結局何が言いたかったのか、なんて考えない。世の中には不思議なこともあるものだ。でも、一人の人間が不思議なことにでくわすことはそう多くはない。それが垣間見れるだけでいいじゃないか。それでいいんだ。
村上春樹は「煙みたいに消える」という表現が好きなのだろうか。はじめ、この表現を見たときは、納得いかなかった。今なら何となくわかる。世の中には説明のつかないことがあると同時に、説明しない方がいいこともたくさんある。そういうことなのだ。それでいいじゃないか。

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