ミカ×ミカ!

2006年8月16日 読書
ISBN:4652077246 単行本 伊藤 たかみ 理論社 2003/02 ¥1,575

文庫になっていたので買いました。とっても清清しくてかわいらしい作品です。双子なのに性格のまったく違うミカとユウスケ。ユウスケの、兄弟ならではのミカへの優しさがいいですね。家族への優しさって他人への優しさとは違うんですよね。まったく裸の状態の優しさというか、それを自分で気づくと照れてしまうようなものです。思春期の少年、少女特有の恋心の描写は見事でした。青春とは美しいものですね。

ストーリー         ★★★☆☆
登場人物の魅力    ★★★★☆
文章(共感度、美しさ)★★☆☆☆ 
総合           ★★★☆☆
ISBN:4334924948 単行本 白石 一文 光文社 2006/04/20 ¥1,470

男の目線で書かれた話だなぁとは思いましたが、なかなか考えさせられる言葉がたくさんありました。そもそも、この本のタイトルがそうです。

「もしも、私があなただったら」

また、同時に、

「もしも、あなたが私だったら」

この二つの言葉は同じだと主人公(あるいは著者)は言います。人が愛する人に何かをするということは、もしも、私があなただったら、こうしてほしいと願うことをすることなのだと。そして、心が通い合うとは、要するにそういうことなのだと。

自分が相手のためにしたいと思うことが、そのまま相手が自分に対してそうしたいと願うことと重なるとき、確かにその二人の心は通い合っている。

この言葉に私は感動しました。


ストーリー         ★★★☆☆
登場人物の魅力    ★★☆☆☆
文章(共感度、美しさ)★★★★☆ 
総合           ★★★☆☆
ISBN:4104346020 単行本 角田 光代 新潮社 2006/01/20 ¥1,470

こわい夢を見そうな「呪い」にまつわるストーリーが多かったです。でも、どれも面白くて、だだだっと読んでしまいました。私の日常でも、たまたま起きた出来事も、関連付けていくと背筋が凍るようなことってあります。それは本当にたまたまなのか、単なる誤解なのか。それでも、もしや・・・といった期待にも似た恐怖。その感じがこの本の中で、詳細に描写されていました。タイトルが逆にこわい夢を誘っている気がします。ありそうな話を集めているので、じんわりとぞくぞくしました。

ストーリー         ★★★★☆
登場人物の魅力    ★★☆☆☆
文章(共感度、美しさ)★★★☆☆ 
総合           ★★★☆☆

秘密

2006年8月2日 読書
ISBN:4167110067 文庫 東野 圭吾 文藝春秋 2001/05 ¥660

面白かったです!文句のつけようがなかったです。ラストは特に素晴らしかった。結構読み手によって捉え方がかわってくると思いますが。死ぬまで娘のふりをして、生きていくと捉えるのは、せつなすぎる。でも、やっぱりそうなのかな。せつないのに、あまりにもさわやかなラストで、やられた・・と思いました。また読み返したいです。

ストーリー         ★★★★★
登場人物の魅力    ★★★★☆
文章(共感度、美しさ)★★★★☆ 
総合           ★★★★★

つきのふね

2006年8月2日 読書
ISBN:404379102X 文庫 森 絵都 角川書店 2005/11/25 ¥460

相互リンクの方がおすすめしていたので、前から森絵都さんの作品は読んでみたかったのです。想像していたとおり、読みやすい本でした。全体的にぼんやりとした印象でしたが、一気に読んでしまったところをみると、結構面白かったのかな。それにしてもこの本の装丁は目をひきます。ずっと気になっていたもんなぁ。

ストーリー         ★★☆☆☆
登場人物の魅力    ★★★☆☆
文章(共感度、美しさ)★★☆☆☆ 
総合           ★★☆☆☆

ひな菊の人生

2006年7月23日 読書
ISBN:4344407822 文庫 吉本 ばなな 幻冬舎 2006/04 ¥480

吉本ばななさんの作品を久しぶりに読みました。この人の文章は、いつも独特の空気があるのがすごく不思議です。まるで、独特の匂いを放っているようです。高校生の時にかなり読みあさっていましたが、今はあまりごひいきにさせてもらっていません。年とともに、好きな本の傾向は変わってきますね。でも、吉本ばななさんの作品で、「読まなきゃよかった」なんて思ったものは一つもないです。何かしら学ぶことがあります。着目するところが違うと思いつつ、今回はこの作品から居候の極意を学びました。上手に甘えることって難しいです。「上手に」っていうのは、つまり意識的にということなのですから、それはすでに甘えてはいないということになるし・・でも、この技を身につけることができたら、結構強いですね。

落下する夕方

2006年7月17日 読書
面白かったです。江國さんの作品は、いつもいまひとつ入り込めなかったのですが、これは2時間ほどのスピードで一気に読んでしまいました。「華子」という女性の登場によって、主人公の生活が、自然に変な方向へ向かっていく様子が面白いです。そして、「華子」は読み手が嫉妬してしまうほどに魅力的に描かれていると思いました。

夜の朝顔

2006年7月8日 読書
ISBN:4087748065 単行本 豊島 ミホ 集英社 2006/04 ¥1,365

これは面白かったです。子供の頃の気持ちを見事に再現していて、読み進めるうちに、自分の小学生時代を思い出しました。本の中身は、一応7話の短編になっていて、同じ主人公が一話ごとに少しずつ年をとっていきます。その主人公の心の微妙な変化、成長を繊細に描写していて、感心しました。作者、24歳っていうのがまたすごい。みずみずしい文章でした。おすすめです。

ストーリー         ★★★★☆
登場人物の魅力    ★★★☆☆
文章(共感度、美しさ)★★★★☆ 
総合           ★★★★☆

最悪

2006年7月1日 読書
ISBN:4062735342 文庫 奥田 英朗 講談社 2002/09 ¥920

三人の登場人物が、交代で語り手になって、ラストで結びつくというオハナシ。
最初はじりじりじりじりストーリーが展開されていくんですよね。とてもリアルに描写されていて、かなりひきつけられました。ただ、最後の方は、つっこみたくなるほど人物もストーリーも豹変するので、ちょっとしっくりこない感じですかね。まぁそれもひっくるめて、面白かったですよ。何だか最近あまり本を読んでいなかったので、そろそろエンジンかかってきました。
ISBN:4594049664 単行本 リリー・フランキー 扶桑社 2005/06/28 ¥1,575

もう今更ですが、ようやく最近読みました。あれだけもてはやされた作品なので、それなりに期待はしていたのですが、読んでみてもその理由がわからずにいる・・リリーさんも色々あるんだなぁというのが率直な感想。最近肉親を亡くしたので、つい感情が入ってしまって何度か泣きましたが、それは自分のことで泣いていただけなので、泣かせる作品とは言えないですかね。
東京へ来て、三ヶ月ですが、まだ東京タワーはのぼっていません。GWに行ったらおびただしい人の数に負けて帰りました。東京タワーは下から、もしくは遠くから見るのがいいんだと納得させながらとぼとぼ帰ったのが私の東京タワーの思い出。東京タワー、もう一つできるみたいですが、一つだけのほうがありがたがられる気がしています。個人的には東京タワーのキャラクターノッポン兄が好きです。

プラナリア

2006年3月13日 読書
ISBN:4167708019 文庫 山本 文緒 文藝春秋 2005/09/02 ¥480

えーっと、「プラナリア」って知っていますかね?切っても切っても、切った部分がいつの間にか再生して増えてしまう生き物らしいですね・・・気持ち悪い。そんなものになりたいって主人公が言うので、インターネットで画像を見てみた・・・超気持ち悪かったです。知らずに生きていたかった。この作品を読んでいると主人公に対して苛立ちがどんどん増すのですが、主人公の苛立ちも理解できました。ということは私は今すごくいらいらしてるのかもしれません。でも、子宮がんについての本とか、プラナリアの写真とかを大量に送りつけるって、やっぱり思いやりがないですよね。「相手の気持ちになる」っていうのは基本的なことで、ちょっと考えたらわかるのに、できない時が多いです。親切心も自己満足だけでなくありがた迷惑になることが結構ありますよね。
個人的には「プラナリア」よりも、「囚われ人のジレンマ」が面白かったです。以下、囚人のジレンマのたとえ話を抜粋します。

〜共犯の窃盗容疑の二人が捕まった。警察は二人を別々の部屋に入れて尋問する。警察は、それぞれの囚人に「先に自白すれば、無罪にする。だがもう一人よりも後に自白したら重い罪に処す」ともちかける。その場合、二人とも自白しなければ証拠がなく罪に問われないが、二人とも自白すればかなり重い刑がかけられる。二人の囚人にとってベストな選択は両者とも黙秘を続けて証拠を隠すことだが、お互い別房に入れられているので結束することができない。そして「相棒が先に自白してしまうと自分には重い罪がかけられる。自分が先に自白すれば無罪放免だ」と両者が考え、結果として二人とも自白して二人ともが罪に処される。こうして両者が相手の戦略を懸命に予想した結果両者ともが損をしてしまうケースを囚人のジレンマと呼ぶ〜

なるほどー・・「自分から損の種をまいている」のですね。こういうことってありますね。

Presents

2006年3月10日 読書
ISBN:4575235393 単行本 松尾 たいこ 双葉社 2005/12 ¥1,470

先日、高校時代からの親友の結婚式に出席したところですが、この本の中に掲載されている「ぬいぐるみ」を読んで、今、こういうのがはやっているのかなぁと思いました。「こういうの」というのは、結婚式の日、新郎・新婦が親へくまのぬいぐるみをプレゼントすることです。そのぬいぐるみの重さは、自分が生まれてきたときの重さにしてあります。そして、そのぬいぐるみを親に抱いてもらって、生んでくれたときの気持ちを思い出させるのです。この本を読む前に結婚式に出席したので、そうしたプレゼントに感激して、素敵だと思ったのですが、わりと行われていることなのかもしれないですね。あまり深みはない短編集でしたが、読みやすくて、あっという間に読み終えました。挿絵も素敵でしたね。私は「プレゼント」と聞いて、どのプレゼントを思い浮かべるかなぁ・・と考えました。プレゼントって、結構あげた時の方が記憶に残っている気がします。心に残るプレゼントって、想定外のことなんじゃないかな。「もらえるし」なんて心の準備をしていたら、何だか「当然」って思ってしまうところもあると思う。ちなみに、結婚した友人には、「しろいうさぎとくろいうさぎ」の絵本をプレゼントしました。すごく喜んでくれて嬉しかった。有名な作品だと思っていたんだけど、友人は知らなかったようで、ストーリーにも感動していました。よかったよかった。
ISBN:4163242104 単行本 重松 清 文藝春秋 2005/08/05 ¥1,500

「その日」は必ず誰にでもおとずれる。息をひきとる「その日」を迎えるまでこそが最も過酷でやりきれない。どうやって「その日」を迎えるべきか。泣き暮れることも、やり残したことをすべてやっておくことも、そに日のあとに備えることも、何事もなかったように過ごすことも、どれがいいなんて答えはない。選択肢はない。なるようになるしかないし、できることをやるしかない。人の死、特に身近な人の死は、遺される者にとって大きいがそれよりも辛いのは「その日」を迎えるための準備ができるまでなのかもしれない。「その日」のあとより「その日」のまえの方が大きいのは、この本でも語られているけれど、それは不安と悲嘆を比べると、不安の方がずっと大きいからで、「その日」を少しでも冷静に受け止めることができるように、不安をめぐらせて「悲嘆」を受け入れる準備をしているからで。もしその「不安」が足りないと、いざ「悲嘆」がやってきたときに、事実から目を背けてしまうんだろう。だから、遺される者にとっては準備期間、悲しみに暮れる時間が必要で、そしてその時間は本人にしかわからない苦しい時間なんだ。
ISBN:4334924727 単行本 荻原 浩 光文社 2005/10/20 ¥1,575

またまた荻原さんの本です。タイトルから、もしかしてSF?と思ったのですが、空想の域を最後まで超えませんでした。都市銀行をやめてタクシードライバーに再就職した主人公が、ストーリーの前半では後悔ばかりしているのですが、後半は「もしあの時、ああだったら」の先にあるものがみえてきて、今となんら変わりはない、もしくは今のほうがいいとさえ思えてくるといった展開。狭いわりに、なかなか清清しかったです。
ISBN:4120036669 単行本 宮本 輝 中央公論新社 2005/10/01 ¥1,680

この話には、静かな中のあたたかなにぎやかさを感じました。豪華本を専門に作ることを職業としている主人公が、新たに依頼されたものが「発酵食品」。それも、醤油、味噌、かつお節、熟鮨等日本の発酵食品に限定して全国を取材し、一冊の本にまとめあげるといった依頼を受けた。発酵食品の本作りの傍ら、主人公の淡い恋も静かに進行し、また主人公の亡き父から端を発した縁が見えてくる。かなり長編だったので、しばらく時期が経ったらもう一度読み返したいと思います。日本の発酵食品は本当にからだによさそうですね。糠漬けをはじめたくなりました。
ISBN:4344006917 単行本 さくら ももこ 幻冬舎 2004/10 ¥1,260

ミルコさんとの雑談のみかと思っていたんですが、書下ろしもついていて嬉しい。私は81年生まれだから、70年代のことはわからないけれど、それなりに笑いました。健康手帖の時と同じタッチだったのでダダーっと読みました。80年手帖がでるのが楽しみです。最近さくらももこは漫画を描いてくれないのでかなしい。コジコジの続きとか読みたいです・・

明日の記憶

2006年1月17日 読書
ISBN:4334924468 単行本 荻原 浩 光文社 2004/10/20 ¥1,575

「私の頭の中の消しゴム」の映画を観た後も思ったけど、アルツハイマーってこわい。物忘れの多い自分に対して「アルツかも」なんて冗談を言っている場合ではないほど深刻な病気だ。肉体の死より精神の死が先にくるって、本人も怖いだろうけど、この本でも語られているように、精神の死がきてからは介護をする側が大変だ。本の中では美しく最終章をしめているけれど、もっと具体的なことを想像するだけでも震える。荻原さんの作品じゃなかったら、この本もこんなに楽しく読み進めることはできなかった。なにが悲しいって、木崎先生がわずかな焼料を何度もごまかして主人公に払い続けさせたことだ。他人の不幸を自分の得のために利用することは、第三者からみるとなんて罪深いんだろうと思う。そして、だまされていたことを自分で気がついてしまうと怒ることもできないほど辛い。幸か不幸かすぐに主人公はそのこと自体を忘れることができるのだとしても。

ナラタージュ

2006年1月17日 読書
ISBN:404873590X 単行本 島本 理生 角川書店 2005/02/28 ¥1,470

教師と生徒の禁断愛・・という設定のわりに、みずみずしい印象を受ける純愛小説でした。まわりに伝わってしまうほどの親密さゆえに、みんなの前ではあまり話さない関係。相手が教師でなくてもこの微妙な距離は共感する人が多いはず。葉山先生の気持ちも主人公の気持ちも理解できて、読みながら苦しくなりました。ハードルの高い恋愛は、好きだから一緒にいるっていう簡単な図式が必ずしも成り立たないからこそ、夢中になってしまうんだろうな。障害がないとだれるしね。
ISBN:4167174065 文庫 石田 衣良 文藝春秋 2002/05 ¥570

昨年から読んでいたのですが、かなり色々な本に浮気をしながらようやく読み終わりました。感想は池袋(1)と同じく。どうも私は事件を扱った作品にそこまで関心をもてない。好き好きですので・・でもそれなりに面白かったですよ。
ISBN:4048736078 単行本 白石 一文 角川書店 2005/04/26 ¥1,680

すっごくいい本でした。私の中で白石一文の株が一気に上がった。この作品に何度か手紙のシーンがあるが、これが読者の感動を誘い、作品全体を高めている。私はほとんどすべての手紙にノックアウトされました。号泣。そして衝撃のクライマックス。教訓も多かったですね。「選べなかった未来はどこにもない」「人間にとって、その対象が敵か味方かを見分ける指標はたった一つだと僕は思ってるんだ。水に対して親和的か否か、それだけだと思う。」「まずやってみて、そしてはじめて、その仕事が自分にとってどんな意義があるのか、ないのかわかる」「運命というのは、たとえ瞬時に察知したとしても受け入れるだけでは足りず、めぐり合ったそれを我が手に掴み取り、必死の思いで守り通してこそ初めて自らのものとなる」これらの言葉を糧にしていきたいものです。

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