グッドラックららばい
2006年1月6日 読書
ISBN:4062751062 文庫 平 安寿子 講談社 2005/06 ¥820
面白かったです。ナレーションが様々な登場人物にいれかわるところがこの作品の大きな特徴です。
別の人物が登場する→ナレーションがいれかわる
というのが繰り返されます。読み終えて思うのは、人間って本当に自分がかわいいんですね。他人がかわいくないっていうわけじゃない。でも、自分が一番かわいい。色んな性格の人がいる。似ている人もいれば全く逆の性格の人もいる。それでも、みんな表現の仕方、考える過程が違うだけで、結局自分が一番なんだ。そう思わせる本でした。自分の気持ちと他人の評価はかけ離れていることもよくわかりました。色んな登場人物に感情移入したり、腹を立てたりと、楽しかったです。
面白かったです。ナレーションが様々な登場人物にいれかわるところがこの作品の大きな特徴です。
別の人物が登場する→ナレーションがいれかわる
というのが繰り返されます。読み終えて思うのは、人間って本当に自分がかわいいんですね。他人がかわいくないっていうわけじゃない。でも、自分が一番かわいい。色んな性格の人がいる。似ている人もいれば全く逆の性格の人もいる。それでも、みんな表現の仕方、考える過程が違うだけで、結局自分が一番なんだ。そう思わせる本でした。自分の気持ちと他人の評価はかけ離れていることもよくわかりました。色んな登場人物に感情移入したり、腹を立てたりと、楽しかったです。
ISBN:4087475573 文庫 荻原 浩 集英社 2003/03 ¥700
3冊目の荻原浩。
この人の作品は一風変わっていて好きですね。最近のお気に入りです。ありえないことを、ありそうな話に組み込んでいくテクニックがすばらしいです。そして、人がとりみだす描写はあまりに滑稽で見事です。私も現実の世界を、この人が書く人物描写のようにコメディチックにみることができたら、もっと楽しく過ごせるのかもしれない。
3冊目の荻原浩。
この人の作品は一風変わっていて好きですね。最近のお気に入りです。ありえないことを、ありそうな話に組み込んでいくテクニックがすばらしいです。そして、人がとりみだす描写はあまりに滑稽で見事です。私も現実の世界を、この人が書く人物描写のようにコメディチックにみることができたら、もっと楽しく過ごせるのかもしれない。
ISBN:4103534184 単行本 村上 春樹 新潮社 2005/09/15 ¥1,470
久しぶりに村上春樹のすばらしさを実感した本です。あら不思議・・と思うことって意外と思い出せない。だからこの本に出会って、なんだか自分にもこんな不思議なことがあったような気がするけど、どうだったかな、と考えた。
不思議なこと、運命的なこと。それは自分がそう意識するからそうなるのだと説明されるとうなずけるが、もうひとつ腑に落ちない。クールにわりきりたくはない。そんな特別なエピソードは、誰しも一つはもっているのではないだろうか。自分がそうだと信じていることによって、それが大きな自信や力になりうるのだから。
久しぶりに村上春樹のすばらしさを実感した本です。あら不思議・・と思うことって意外と思い出せない。だからこの本に出会って、なんだか自分にもこんな不思議なことがあったような気がするけど、どうだったかな、と考えた。
不思議なこと、運命的なこと。それは自分がそう意識するからそうなるのだと説明されるとうなずけるが、もうひとつ腑に落ちない。クールにわりきりたくはない。そんな特別なエピソードは、誰しも一つはもっているのではないだろうか。自分がそうだと信じていることによって、それが大きな自信や力になりうるのだから。
勝手にブックランキング
2005年12月21日 読書
ISBN:4093861528 新書 さくら ももこ 小学館 2005/07/14 ¥1,050
今年に入ってから、ブックレビューを書いたものだけで50冊以上。レビューに書いたもの以外にも少なくとも10冊以上は読んでいるし、基本的に漫画のレビューを書いていないので、漫画もあわせると今年は読書の1年だったなぁ。もともと本を読むことは好きだったけれど、今まで欠かさず読んでいたのはさくらももこのエッセイぐらいだった私が、ここまでたくさん読むようになったのは、ただ通勤時間が延びたから・・なのですが。
ということで、今年に入ってから私が読んだ本の中で面白かったものを勝手にランク付けしておこうと思う。
まず、エッセイ。エッセイといえば私の中ではさくらももこだったのですが、今年読んだ角田光代の「しあわせのねだん」はかなりヒットでした。ひとりずもうも面白かったけどね。
ショートショートでは、村上春樹もいいのですが、やはり星先生は強し。「ボッコちゃん」が最高です。
恋愛小説系では、大崎善生の「パイロットフィッシュ」と村上春樹の「ノルウェイの森」が私の胸を打ち抜きました。甲乙つけがたい!!
ミステリー系では、最近読んだ岡崎二人の「99%の誘拐」がわくわくしてよかったですね。
一般小説の格付けは難しい。角田光代の「対岸の彼女」も、重松清の「流星ワゴン」も、荻原浩の「コールドゲーム」も、山田詠美の「ぼくは勉強ができない」も良かったのですが、今ふたたび話題になっている小川洋子さんの「博士の愛した数式」はすばらしかったです。
漫画はさらに難しい・・のだめカンタービレも、NANAも、ホタルノヒカリも、働きマンも、シュガシュガルーンも面白かった・・先輩と彼女もよかった・・でも、やっぱりハチミツとクローバーは強しです。
今年に入ってから、ブックレビューを書いたものだけで50冊以上。レビューに書いたもの以外にも少なくとも10冊以上は読んでいるし、基本的に漫画のレビューを書いていないので、漫画もあわせると今年は読書の1年だったなぁ。もともと本を読むことは好きだったけれど、今まで欠かさず読んでいたのはさくらももこのエッセイぐらいだった私が、ここまでたくさん読むようになったのは、ただ通勤時間が延びたから・・なのですが。
ということで、今年に入ってから私が読んだ本の中で面白かったものを勝手にランク付けしておこうと思う。
まず、エッセイ。エッセイといえば私の中ではさくらももこだったのですが、今年読んだ角田光代の「しあわせのねだん」はかなりヒットでした。ひとりずもうも面白かったけどね。
ショートショートでは、村上春樹もいいのですが、やはり星先生は強し。「ボッコちゃん」が最高です。
恋愛小説系では、大崎善生の「パイロットフィッシュ」と村上春樹の「ノルウェイの森」が私の胸を打ち抜きました。甲乙つけがたい!!
ミステリー系では、最近読んだ岡崎二人の「99%の誘拐」がわくわくしてよかったですね。
一般小説の格付けは難しい。角田光代の「対岸の彼女」も、重松清の「流星ワゴン」も、荻原浩の「コールドゲーム」も、山田詠美の「ぼくは勉強ができない」も良かったのですが、今ふたたび話題になっている小川洋子さんの「博士の愛した数式」はすばらしかったです。
漫画はさらに難しい・・のだめカンタービレも、NANAも、ホタルノヒカリも、働きマンも、シュガシュガルーンも面白かった・・先輩と彼女もよかった・・でも、やっぱりハチミツとクローバーは強しです。
ISBN:4163239308 単行本 山田 詠美 文藝春秋 2005/05/15 ¥1,290
何ヶ月か前、ダ・ヴィンチのプラチナ本にもなっていたので大変期待して読ませていただきました。短編だったのですね・・どの短編も、少し完成しきれていない感はあったけれどまぁ面白かった。個人的には一話目「間食」が一番面白かったかな。
―雄太は、ベッドに横たわったまま、花を背後から抱きしめる。小さくてやわらかい塊。ぬいぐるみを抱いて寝る女の子の気持ちがよくわかる。腕の中に入れるために存在するもの。頬をこするつけて、自分のにおいを移すためにあるもの。噛んだり、羽交い絞めにしたり、つねったり。可愛がりたい気持ちが行き過ぎて、ついそんな行動に出てしまいたくなる対象―
この部分を読んで、何だか自分が花になって包まれたような、あったかい安らぐ気持ちになった。山田さんは奥の部分を語るのがうまいなぁ。
何ヶ月か前、ダ・ヴィンチのプラチナ本にもなっていたので大変期待して読ませていただきました。短編だったのですね・・どの短編も、少し完成しきれていない感はあったけれどまぁ面白かった。個人的には一話目「間食」が一番面白かったかな。
―雄太は、ベッドに横たわったまま、花を背後から抱きしめる。小さくてやわらかい塊。ぬいぐるみを抱いて寝る女の子の気持ちがよくわかる。腕の中に入れるために存在するもの。頬をこするつけて、自分のにおいを移すためにあるもの。噛んだり、羽交い絞めにしたり、つねったり。可愛がりたい気持ちが行き過ぎて、ついそんな行動に出てしまいたくなる対象―
この部分を読んで、何だか自分が花になって包まれたような、あったかい安らぐ気持ちになった。山田さんは奥の部分を語るのがうまいなぁ。
ISBN:4087478165 文庫 石田 衣良 集英社 2005/05/20 ¥480
石田衣良さんの短編恋愛小説。感想は・・微妙。不自然な比喩が多すぎるからいちいち気になるんだな。スローグッドバイもかなり売れているみたいだけど、断然「池袋・・」のタッチの方が面白い。もう石田さんの恋愛小説はおなかいっぱいだ。
石田衣良さんの短編恋愛小説。感想は・・微妙。不自然な比喩が多すぎるからいちいち気になるんだな。スローグッドバイもかなり売れているみたいだけど、断然「池袋・・」のタッチの方が面白い。もう石田さんの恋愛小説はおなかいっぱいだ。
池袋ウエストゲートパーク
2005年12月10日 読書
ISBN:4167174030 文庫 石田 衣良 文芸春秋 2001/07 ¥570
一話目はかなり面白かった。ただ、二話目、三話目・・・となるにつれて段々だれてきたけれど。ある場所を舞台に自分のまわりで事件がおきて解決に導いていく普通の男。自己投影しやすいヒーロー。なるほど、この作品がうれているわけがわかりました。
一話目はかなり面白かった。ただ、二話目、三話目・・・となるにつれて段々だれてきたけれど。ある場所を舞台に自分のまわりで事件がおきて解決に導いていく普通の男。自己投影しやすいヒーロー。なるほど、この作品がうれているわけがわかりました。
ISBN:4062747871 文庫 岡嶋 二人 講談社 2004/06 ¥730
徳山諄一と井上泉の共作。二人の作家がどんな風に協力して小説を書くんだろう。不思議。内容は最高だった。犯人がわかっても最後までどきどきさせてくれるまさかの面白さ。何度か読み返したい作品。
徳山諄一と井上泉の共作。二人の作家がどんな風に協力して小説を書くんだろう。不思議。内容は最高だった。犯人がわかっても最後までどきどきさせてくれるまさかの面白さ。何度か読み返したい作品。
ISBN:4101230315 文庫 荻原 浩 新潮社 2005/10 ¥700
面白かった。神様からの一言とはまた違った面白さがあった。いじめがテーマということで、暗い話かと思っていたけれど、それだけじゃなかった。世間の常識が絶対じゃないということは社会人2年目の私にもじわじわわかってきたけれど、この作品を読んでもう一度そのことを考えさせられた。それにしても主人公は「できるのになにもしなかった罪」だったけれど、それはさかうらみもいいとこだと思う。誰だっていじめはこわい。いじめること自体、いじめられたくないという気持ちがそうさせる人がほとんどだろう。私も小学生の頃を思い出すと、主人公と同罪になるのだろうか。見ているのに見ていなかった。いじめは社会にでてますますエスカレートするようにも思う。
面白かった。神様からの一言とはまた違った面白さがあった。いじめがテーマということで、暗い話かと思っていたけれど、それだけじゃなかった。世間の常識が絶対じゃないということは社会人2年目の私にもじわじわわかってきたけれど、この作品を読んでもう一度そのことを考えさせられた。それにしても主人公は「できるのになにもしなかった罪」だったけれど、それはさかうらみもいいとこだと思う。誰だっていじめはこわい。いじめること自体、いじめられたくないという気持ちがそうさせる人がほとんどだろう。私も小学生の頃を思い出すと、主人公と同罪になるのだろうか。見ているのに見ていなかった。いじめは社会にでてますますエスカレートするようにも思う。
ISBN:4334738427 文庫 荻原 浩 光文社 2005/03/10 ¥720
主人公(涼平)は一流広告代理店につとめていたが、短気な性格ゆえ、上司といざこざがあり退職する。しばらくは生活費を折半して同棲しているリン子とのんびり退職金で過ごすつもりだったがリン子はひょんなことがきっかけで出て行ってしまう。仕方なく再就職した珠川食品の上層部は頭がかたく、会議中に涼平はまたもや乱闘。そしてリストラ職員養成部と化しているお客様相談室へ配置換えされてしまうが・・・
随分分厚い本だったけど、一気に読んでしまった。面白かった。食品業界の裏社会をのぞけた気がする(これをうのみにするとクレームがきそうだけど)。
主人公(涼平)は一流広告代理店につとめていたが、短気な性格ゆえ、上司といざこざがあり退職する。しばらくは生活費を折半して同棲しているリン子とのんびり退職金で過ごすつもりだったがリン子はひょんなことがきっかけで出て行ってしまう。仕方なく再就職した珠川食品の上層部は頭がかたく、会議中に涼平はまたもや乱闘。そしてリストラ職員養成部と化しているお客様相談室へ配置換えされてしまうが・・・
随分分厚い本だったけど、一気に読んでしまった。面白かった。食品業界の裏社会をのぞけた気がする(これをうのみにするとクレームがきそうだけど)。
ISBN:4104767018 単行本 市川 拓司 新潮社 2005/06/29 ¥1,365
一貫してくらーい内容だった。こういう作品も書くんだな。死のにおいがぷんぷんしていた。随分細部までリアルに描かれていたけれど、どうして死体の保存法とか知ってるんだろう。こわい。最近母親に毒薬を飲ませ続けていた娘についてのニュースが話題になったけど、あの女の子が読んでいた本もおかしい。そして私が「おかしい」と思うこの気持ちも、いつか「おかしい」と思うような時代がくるのかもしれない。本の内容としてはまずまずだったけど、あんまり暗い世界に興味がないからいまひとつ楽しめなかった。
一貫してくらーい内容だった。こういう作品も書くんだな。死のにおいがぷんぷんしていた。随分細部までリアルに描かれていたけれど、どうして死体の保存法とか知ってるんだろう。こわい。最近母親に毒薬を飲ませ続けていた娘についてのニュースが話題になったけど、あの女の子が読んでいた本もおかしい。そして私が「おかしい」と思うこの気持ちも、いつか「おかしい」と思うような時代がくるのかもしれない。本の内容としてはまずまずだったけど、あんまり暗い世界に興味がないからいまひとつ楽しめなかった。
ぼくは勉強ができない
2005年11月2日 読書
ISBN:4101036160 文庫 山田 詠美 新潮社 1996/02 ¥420
今まで読んだ山田詠美の作品の中ではダントツ面白かった。正直に言うと「こんな小難しいことばっか考えてて勉強ができない高校生いるのか?」といったところだけれど。おそらく「勉強ができない」と言っても進学校の中で下の方、とかそういうイメージなんだろうな。高校生の頃の私が読んでも意味がわかんなかったと思う。だから今この本を手にすることができたことに感謝。大人になってみて初めて主人公の気持ちがわかる。あれこれ考えすぎているところが若さを感じさせて、考えていることが大人な分笑える。また読み返したくなる一冊だ。
今まで読んだ山田詠美の作品の中ではダントツ面白かった。正直に言うと「こんな小難しいことばっか考えてて勉強ができない高校生いるのか?」といったところだけれど。おそらく「勉強ができない」と言っても進学校の中で下の方、とかそういうイメージなんだろうな。高校生の頃の私が読んでも意味がわかんなかったと思う。だから今この本を手にすることができたことに感謝。大人になってみて初めて主人公の気持ちがわかる。あれこれ考えすぎているところが若さを感じさせて、考えていることが大人な分笑える。また読み返したくなる一冊だ。
ISBN:4101098018 文庫 星 新一 新潮社 1971/05 ¥500
今さら星新一に初めて手をだしてはまってしまいました。
村上春樹でさんざん読んだショートショートというジャンルはとても読みやすくて、通勤時間に最適。星さんはこのジャンルの先駆者だったのね。しらなかった(恥)。村上春樹とは似ているようで全然違う小説家だ。SFでもどこかリアル。本好きの友人いわく「星新一は起承転結があるからね」と。なるほど。あの短いストーリーの中にこれだけたくさんもりこむんだからすごいな。頭いいなぁって思い、ため息がでてしまう。今はようこそ地球さんを読んでいます。これだけたくさんの作品を書いているのに、どれを読んでもはずれがないって思う。
今さら星新一に初めて手をだしてはまってしまいました。
村上春樹でさんざん読んだショートショートというジャンルはとても読みやすくて、通勤時間に最適。星さんはこのジャンルの先駆者だったのね。しらなかった(恥)。村上春樹とは似ているようで全然違う小説家だ。SFでもどこかリアル。本好きの友人いわく「星新一は起承転結があるからね」と。なるほど。あの短いストーリーの中にこれだけたくさんもりこむんだからすごいな。頭いいなぁって思い、ため息がでてしまう。今はようこそ地球さんを読んでいます。これだけたくさんの作品を書いているのに、どれを読んでもはずれがないって思う。
ISBN:4794966687 単行本 角田 光代 晶文社 2005/05 ¥1,470
角田さんのエッセイを読むのは初。身近なテーマからお金にまつわるいろいろな気持ちを正直に書き連ねている。エッセイではあるけれど、今まであんまり考えなかったことをあらためて気づかされることが多かった。
「昼めし977円」を読んで、私も一日中とはいわないまでも一日のうちの多くの時間、次に食べる物について考えている。平日でもそんな調子だし、誰かとご飯を食べる休日には、次何たべる?という質問が幾度もくりかえされる。生き物は生きるために食べるのか、食べるために生きるのか、時々わからなくなる。そのくらい食べるということは生きるエネルギーなのだと感じさせられる。
「コーヒー2.80NZドル、ヤムヌアごはんつき8NZドル」と「一日」を読んで、お金をつかうということは大事だなぁと思った。確かに、お金をつかってはじめて記憶に残ることが多い。お金を費やしたら費やした分だけ、もしくは費やした以上に何かは残る(あるいは時間もそうなのかもしれない)。貯金をしても数字にしか残らない。なるほどなるほど。私が24年間の中で、最も費やしてきたものって何だろう。はじめて考えてみるけれど、これだけはゆずれない、というものはなく、あえて言えばチョコレートだけだったことに気づく。うむ。確かにチョコレートには詳しく、自信があるけど・・・もっといろいろお金をつかおう・・・
角田さんのエッセイを読むのは初。身近なテーマからお金にまつわるいろいろな気持ちを正直に書き連ねている。エッセイではあるけれど、今まであんまり考えなかったことをあらためて気づかされることが多かった。
「昼めし977円」を読んで、私も一日中とはいわないまでも一日のうちの多くの時間、次に食べる物について考えている。平日でもそんな調子だし、誰かとご飯を食べる休日には、次何たべる?という質問が幾度もくりかえされる。生き物は生きるために食べるのか、食べるために生きるのか、時々わからなくなる。そのくらい食べるということは生きるエネルギーなのだと感じさせられる。
「コーヒー2.80NZドル、ヤムヌアごはんつき8NZドル」と「一日」を読んで、お金をつかうということは大事だなぁと思った。確かに、お金をつかってはじめて記憶に残ることが多い。お金を費やしたら費やした分だけ、もしくは費やした以上に何かは残る(あるいは時間もそうなのかもしれない)。貯金をしても数字にしか残らない。なるほどなるほど。私が24年間の中で、最も費やしてきたものって何だろう。はじめて考えてみるけれど、これだけはゆずれない、というものはなく、あえて言えばチョコレートだけだったことに気づく。うむ。確かにチョコレートには詳しく、自信があるけど・・・もっといろいろお金をつかおう・・・
ISBN:4104588040 単行本 中村 文則 新潮社 2005/07/26 ¥1,260
〜主人公は27歳の青年。タクシーの運転手をして生計を立てている。親から捨てられた子供たちのいる施設で育ち、養子として引き取った遠い親戚は殴る、蹴るの暴力を彼に与えた。彼は「恐怖に感情が乱され続けたことで、恐怖が癖のように、血肉のようになって、彼の身体に染みついている」。彼の周囲には、いっそう暴力が横溢していく。自ら恐怖を求めてしまうかのような彼は、恐怖を克服して生きてゆけるのか。主人公の恐怖、渇望、逼迫感が今まで以上に丹念に描写された、力作。表題作に、短編「蜘蛛の声」を幣録〜
はじめから終わりまでまったく救いがないストーリー展開。幼いころ虐げられて育つと本当にこんな具合に歪みが生じてしまうものなのだろうか。想像こそするけれどあまりにリアルに描写されているので考えさせられる作品だった。恐怖を与えられ続けたために恐怖を体が欲している状態。それは自己破滅だ。驚くほど描写が的確で、入り込みすぎて読み終わるとふらふらになった。
「蜘蛛の声」〜主人公は入社してすぐに仕事で大きな成功を収めるも、それをきっかけに自分の殻に閉じこもるようになった。そんな精神状態の中、彼は通勤途中に見ていた橋の下へ自然と足が向かい、そこで生活をはじめる。しばらくそこで生活していた彼は、ある日付近から通報を受けた警官に起こされる。最近頻発している通り魔の容疑がかけられ、警察へ連れて行かれそうになった主人公は勢いあまって警官を川へ突き落とす。警官に侘びをいれ、自分が通り魔ではないことを懸命に説明し、しぶしぶ帰っていく警官を見送った後、蜘蛛が現れる。その蜘蛛が言うには、これまでの彼の記憶は自分が作り上げたものであり、本当はずいぶん前からその場所に彼がいたのだという。彼は会社に勤めたことはなく、通り魔事件を起こしたのも彼なのだと。彼は信じられない気持ちだったが次第にどちらが真実なのかわかならくなってくる。もし自分が犯人なのなら…その気持ちが新たな事件の引き金になる予感を読者に与えてこの作品は終わっている〜
「土の中の子供」とはまったく違うストーリーではあるが、この二つの作品には通ずるものがあると思う。ここまで暗いと逆に元気が出る気もする。
〜主人公は27歳の青年。タクシーの運転手をして生計を立てている。親から捨てられた子供たちのいる施設で育ち、養子として引き取った遠い親戚は殴る、蹴るの暴力を彼に与えた。彼は「恐怖に感情が乱され続けたことで、恐怖が癖のように、血肉のようになって、彼の身体に染みついている」。彼の周囲には、いっそう暴力が横溢していく。自ら恐怖を求めてしまうかのような彼は、恐怖を克服して生きてゆけるのか。主人公の恐怖、渇望、逼迫感が今まで以上に丹念に描写された、力作。表題作に、短編「蜘蛛の声」を幣録〜
はじめから終わりまでまったく救いがないストーリー展開。幼いころ虐げられて育つと本当にこんな具合に歪みが生じてしまうものなのだろうか。想像こそするけれどあまりにリアルに描写されているので考えさせられる作品だった。恐怖を与えられ続けたために恐怖を体が欲している状態。それは自己破滅だ。驚くほど描写が的確で、入り込みすぎて読み終わるとふらふらになった。
「蜘蛛の声」〜主人公は入社してすぐに仕事で大きな成功を収めるも、それをきっかけに自分の殻に閉じこもるようになった。そんな精神状態の中、彼は通勤途中に見ていた橋の下へ自然と足が向かい、そこで生活をはじめる。しばらくそこで生活していた彼は、ある日付近から通報を受けた警官に起こされる。最近頻発している通り魔の容疑がかけられ、警察へ連れて行かれそうになった主人公は勢いあまって警官を川へ突き落とす。警官に侘びをいれ、自分が通り魔ではないことを懸命に説明し、しぶしぶ帰っていく警官を見送った後、蜘蛛が現れる。その蜘蛛が言うには、これまでの彼の記憶は自分が作り上げたものであり、本当はずいぶん前からその場所に彼がいたのだという。彼は会社に勤めたことはなく、通り魔事件を起こしたのも彼なのだと。彼は信じられない気持ちだったが次第にどちらが真実なのかわかならくなってくる。もし自分が犯人なのなら…その気持ちが新たな事件の引き金になる予感を読者に与えてこの作品は終わっている〜
「土の中の子供」とはまったく違うストーリーではあるが、この二つの作品には通ずるものがあると思う。ここまで暗いと逆に元気が出る気もする。
この本が、世界に存在することに
2005年9月25日 読書
ISBN:4840112592 単行本 角田 光代 メディアファクトリー 2005/05 ¥1,470
一度読んだことのある本をもう一度読み返してみると、初めに読んだときに思い違いをしていたことに気づいたり、新たな発見があったりすることはよくある。記憶に残っているストーリーと実際がかけ離れていたり、感情移入できる登場人物も自分のコンディションによって変わる。本はどことなくミステリアスな存在だ。その本を中心にさまざまなストーリーが展開されていて、この作品自体、ミステリアスでもある。色んなの国の古本屋を移動しながら何度も主人公とめぐりあう本、恋人と共有していた本、大学の古本屋を順繰りに渡り歩く本。本をじっと眺めていると、そんな新しいストーリーが生まれてくるのだろう。最後までわくわくしながらこの短編をよみきりました。
一度読んだことのある本をもう一度読み返してみると、初めに読んだときに思い違いをしていたことに気づいたり、新たな発見があったりすることはよくある。記憶に残っているストーリーと実際がかけ離れていたり、感情移入できる登場人物も自分のコンディションによって変わる。本はどことなくミステリアスな存在だ。その本を中心にさまざまなストーリーが展開されていて、この作品自体、ミステリアスでもある。色んなの国の古本屋を移動しながら何度も主人公とめぐりあう本、恋人と共有していた本、大学の古本屋を順繰りに渡り歩く本。本をじっと眺めていると、そんな新しいストーリーが生まれてくるのだろう。最後までわくわくしながらこの短編をよみきりました。
ISBN:4167693011 文庫 長嶋 有 文芸春秋 2005/02 ¥400
「サイドカーに犬」を読んで何だか麦チョコが食べたくなりました。麦チョコって意外においしい。高級なマカダミアナッツのチョコレートもいいけど、その何分の一の値段の麦チョコを食べたい気持ちになる瞬間のほうが、人生には多い気がする。いつも食べていると飽きてしまうのかもしれないけど。
「サイドカーに犬」を読んで何だか麦チョコが食べたくなりました。麦チョコって意外においしい。高級なマカダミアナッツのチョコレートもいいけど、その何分の一の値段の麦チョコを食べたい気持ちになる瞬間のほうが、人生には多い気がする。いつも食べていると飽きてしまうのかもしれないけど。
ISBN:4043648022 文庫 川島 誠 角川書店 2003/02 ¥480
川島さんの短編は初めて読んだけど、今まで読んだ長編とはちょっと違っていて楽しめた。ありえない・・・でも。というような設定が多くて、その中でも特に「電話が鳴っている」が面白かった。SFチックな作品も読んでみたいかも。
川島さんの短編は初めて読んだけど、今まで読んだ長編とはちょっと違っていて楽しめた。ありえない・・・でも。というような設定が多くて、その中でも特に「電話が鳴っている」が面白かった。SFチックな作品も読んでみたいかも。
もういちど走り出そう
2005年9月8日 読書
ISBN:4043648030 文庫 川島 誠 角川書店 2003/06 ¥500
800の方が全然面白かった。でもまぁまぁ・・・
気に入らなかったのは一節終わるたびに何らかの暗示的表現がつかわれていた点だ。はじめはまだよかったけれど、段々くどい!と思ってしまって、せっかくのストーリーが崩れる。「でも・・・」「しかし・・・」もうおなかいっぱい。これがなければなぁ。
この人の作品は陸上が舞台になることが多くて、読んでいるうちに、あの面白くなさそうな、しんどいだけという陸上のイメージが和らいで、走ってみようか、と思ってしまう。
この作品のストーリーは、わりと普段私が考えていることと重なることが多くて、ちょっと人事ではない・・・という気持ちで読んだ。
なるほど、世間は小説を実体験に基づいて書いていると思うのか。そういわれてみれば私もそうだ。小説家って、きっとそういうことを気にしていたらやっていけない。結構リスクの高い職業だったんだなぁ。
800の方が全然面白かった。でもまぁまぁ・・・
気に入らなかったのは一節終わるたびに何らかの暗示的表現がつかわれていた点だ。はじめはまだよかったけれど、段々くどい!と思ってしまって、せっかくのストーリーが崩れる。「でも・・・」「しかし・・・」もうおなかいっぱい。これがなければなぁ。
この人の作品は陸上が舞台になることが多くて、読んでいるうちに、あの面白くなさそうな、しんどいだけという陸上のイメージが和らいで、走ってみようか、と思ってしまう。
この作品のストーリーは、わりと普段私が考えていることと重なることが多くて、ちょっと人事ではない・・・という気持ちで読んだ。
なるほど、世間は小説を実体験に基づいて書いていると思うのか。そういわれてみれば私もそうだ。小説家って、きっとそういうことを気にしていたらやっていけない。結構リスクの高い職業だったんだなぁ。
ダンス・ダンス・ダンス
2005年9月5日 読書
久しぶりの春樹作品。いやはや相変わらず長い。この作品はそこまでしんどくはなかった。まだわかりやすい方だと思う。
何が好きって、ストーリーはもちろん、それ以上に主人公が用いる比喩表現が大好き。私はノルウェイの森でも主人公にのめりこんだけれど、今回の主人公も素敵だった。13歳のユキに性欲の説明をするときに、咄嗟にとぶのを抑制されたとびたい鳥にたとえるシーンなんてすごく印象的だ。幻想的で感覚的で、それでいて確かに似ている。
好きな作品や作者が同じでも、読み手によって共感する部分も憧れる部分も違うんだろう。私は村上春樹の作品は、こういうところが一番好き。こんなことばかり考えている人がいないかな。
何が好きって、ストーリーはもちろん、それ以上に主人公が用いる比喩表現が大好き。私はノルウェイの森でも主人公にのめりこんだけれど、今回の主人公も素敵だった。13歳のユキに性欲の説明をするときに、咄嗟にとぶのを抑制されたとびたい鳥にたとえるシーンなんてすごく印象的だ。幻想的で感覚的で、それでいて確かに似ている。
好きな作品や作者が同じでも、読み手によって共感する部分も憧れる部分も違うんだろう。私は村上春樹の作品は、こういうところが一番好き。こんなことばかり考えている人がいないかな。