ISBN:4344400062 文庫 川上 弘美 幻冬舎 2000/08 ¥560

3年くらい前に購入した本が、実家の本棚の中でたたずんでいるのを見つけて、何となく読んでみました。購入したばかりの時は、全然入り込めなくて、途中で別の作品をよんでしまっていたのですが、全然面白かったです。そう考えると、この3年間で少なくとも自分が成長しているという証拠なのでしょうか。そう思いたい。学生の頃よりも社会人になってから本をよく読むようになりました。社会人になってはや4年弱。私が多少読書家になって4年。私の中の目に見えない変化を、一冊の本が教えてくれたような気がして、嬉しくなった瞬間でした。

以下引用
「君が好きになってくれるに従って僕も好きになったのだった。すると君はますます好きになり僕もますます好きになったのだった。いちばん好きになったのは、しかしその前に君のことを一番好きになる以前にいちばん好きだったもののことを思わねばならぬ。むろん自分のことがいちばん好きということは基調であるにしろ、たとえばはでやかなよく笑うしなしなとした何人かの女の子だの長い間かかって集めた珍重されるべき切手の数々だの味わうために日の上っている間ほとんど何も口にせずに日が落ちてしばらくするとゆっくり口にふくむ酒だの。しかし何がいちばん好きかと問われると僕は口ごもる。君のことだとていちばん好きなのかそうでないのか。一番などと順位づけするのもおかなしな話であるが君が言ってもらいたいのはそんな理路整然のことではないこともわかるので僕は君が一番好きです。いつから一番好きになったかというと、大昔から一番好きだったのです。いつまでというなら永遠にであり永遠にいちばん君のことが好きなのです。」

そうなのです。多くの女の子が一番大切な人に言ってもらいたい言葉、少なくとも私が言ってもらいたい言葉はそこなのです。

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