ISBN:410125141X 文庫 蓮見 圭一 新潮社 ¥500

病を患った女性が、愛娘にあてて自分の半生を吹き込んだテープを起こした物語。

それだけに、普通の小説とは違った感覚で読めます。その語り口調は夏目漱石の「こころ」を思い出しました。

奥の深いストーリーでしたが、特に記憶に残ったのは、この場面です。

「彼は母親が行商をしていることを恥じている自分を恥じていたんです。彼はそういう人なんです。一筋縄じゃいかない、とても複雑な人なんですよ」

この部分を読んで、妙に納得すると同時に、自分は複雑な人間だと気づきました。このような感情は私にもとても覚えがある、というよりは、常日頃感じていることでした。自分では、自分と言う人間はとても単純だと思っていたけれど、その逆を人から言われることが多くて、内心不満に思っていましたが、納得です。

ストーリー         ★★★★☆
登場人物の魅力    ★★★☆☆
文章(共感度、美しさ)★★★☆☆ 
総合           ★★★★☆

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