ISBN:4104588040 単行本 中村 文則 新潮社 2005/07/26 ¥1,260
〜主人公は27歳の青年。タクシーの運転手をして生計を立てている。親から捨てられた子供たちのいる施設で育ち、養子として引き取った遠い親戚は殴る、蹴るの暴力を彼に与えた。彼は「恐怖に感情が乱され続けたことで、恐怖が癖のように、血肉のようになって、彼の身体に染みついている」。彼の周囲には、いっそう暴力が横溢していく。自ら恐怖を求めてしまうかのような彼は、恐怖を克服して生きてゆけるのか。主人公の恐怖、渇望、逼迫感が今まで以上に丹念に描写された、力作。表題作に、短編「蜘蛛の声」を幣録〜
はじめから終わりまでまったく救いがないストーリー展開。幼いころ虐げられて育つと本当にこんな具合に歪みが生じてしまうものなのだろうか。想像こそするけれどあまりにリアルに描写されているので考えさせられる作品だった。恐怖を与えられ続けたために恐怖を体が欲している状態。それは自己破滅だ。驚くほど描写が的確で、入り込みすぎて読み終わるとふらふらになった。
「蜘蛛の声」〜主人公は入社してすぐに仕事で大きな成功を収めるも、それをきっかけに自分の殻に閉じこもるようになった。そんな精神状態の中、彼は通勤途中に見ていた橋の下へ自然と足が向かい、そこで生活をはじめる。しばらくそこで生活していた彼は、ある日付近から通報を受けた警官に起こされる。最近頻発している通り魔の容疑がかけられ、警察へ連れて行かれそうになった主人公は勢いあまって警官を川へ突き落とす。警官に侘びをいれ、自分が通り魔ではないことを懸命に説明し、しぶしぶ帰っていく警官を見送った後、蜘蛛が現れる。その蜘蛛が言うには、これまでの彼の記憶は自分が作り上げたものであり、本当はずいぶん前からその場所に彼がいたのだという。彼は会社に勤めたことはなく、通り魔事件を起こしたのも彼なのだと。彼は信じられない気持ちだったが次第にどちらが真実なのかわかならくなってくる。もし自分が犯人なのなら…その気持ちが新たな事件の引き金になる予感を読者に与えてこの作品は終わっている〜
「土の中の子供」とはまったく違うストーリーではあるが、この二つの作品には通ずるものがあると思う。ここまで暗いと逆に元気が出る気もする。
〜主人公は27歳の青年。タクシーの運転手をして生計を立てている。親から捨てられた子供たちのいる施設で育ち、養子として引き取った遠い親戚は殴る、蹴るの暴力を彼に与えた。彼は「恐怖に感情が乱され続けたことで、恐怖が癖のように、血肉のようになって、彼の身体に染みついている」。彼の周囲には、いっそう暴力が横溢していく。自ら恐怖を求めてしまうかのような彼は、恐怖を克服して生きてゆけるのか。主人公の恐怖、渇望、逼迫感が今まで以上に丹念に描写された、力作。表題作に、短編「蜘蛛の声」を幣録〜
はじめから終わりまでまったく救いがないストーリー展開。幼いころ虐げられて育つと本当にこんな具合に歪みが生じてしまうものなのだろうか。想像こそするけれどあまりにリアルに描写されているので考えさせられる作品だった。恐怖を与えられ続けたために恐怖を体が欲している状態。それは自己破滅だ。驚くほど描写が的確で、入り込みすぎて読み終わるとふらふらになった。
「蜘蛛の声」〜主人公は入社してすぐに仕事で大きな成功を収めるも、それをきっかけに自分の殻に閉じこもるようになった。そんな精神状態の中、彼は通勤途中に見ていた橋の下へ自然と足が向かい、そこで生活をはじめる。しばらくそこで生活していた彼は、ある日付近から通報を受けた警官に起こされる。最近頻発している通り魔の容疑がかけられ、警察へ連れて行かれそうになった主人公は勢いあまって警官を川へ突き落とす。警官に侘びをいれ、自分が通り魔ではないことを懸命に説明し、しぶしぶ帰っていく警官を見送った後、蜘蛛が現れる。その蜘蛛が言うには、これまでの彼の記憶は自分が作り上げたものであり、本当はずいぶん前からその場所に彼がいたのだという。彼は会社に勤めたことはなく、通り魔事件を起こしたのも彼なのだと。彼は信じられない気持ちだったが次第にどちらが真実なのかわかならくなってくる。もし自分が犯人なのなら…その気持ちが新たな事件の引き金になる予感を読者に与えてこの作品は終わっている〜
「土の中の子供」とはまったく違うストーリーではあるが、この二つの作品には通ずるものがあると思う。ここまで暗いと逆に元気が出る気もする。
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